知りたい!子育て!

もうすぐ入園
~幼稚園でうまくやっていけるか不安です

永瀬春美 (篠原学園専門学校こども保育学科 専任講師)

1月に3歳になった男の子です。この4月から幼稚園に入園しますが、初めてでいろいろなことが気になり、不安です。

以前から偏食がちなのが心配で、インターネットの子育てサイトでレシピを調べ、いろいろ工夫していますが嫌いなものは断固として食べません。おむつも入園までには外れるようにとあれこれ試していますが、お漏らししても平気な顔で遊んでいて、叱られても笑っていたり・・・何をやってもうまくいきません。

主人から「いつも甘やかしているからだ!」と責められると余計に焦り、子どもについ怒鳴ってしまったり、「自分の何がいけないんだろう」と落ち込んだりします。  (K子)

もうすぐ入園とのこと、おめでとうございます。
初めての集団生活は、何かとご心配なことと思います。

ご主人に責められて焦ったり、いらだつ自分を責めて落ち込んだり、そんな日が続いてK子さんもお疲れがたまっているかもしれません。ひとつ深呼吸をして、ホッと息をつく時間をつくってみませんか?
お子さんのアルバムをめくってみるとか、育児日記のようなものがあれば読み返してみるとか、母子手帳を見て成長の過程を振り返り、じっくり味わうのも意外と楽しいものです。

妊娠がわかってお子さんが生まれるまでの間、K子さんはどのように過ごされましたか?
お腹の赤ちゃんのことを気づかって、努力したことがありますか? いろいろ心配なこともおありだったでしょうし、大変なこともたくさんあったと思います。出産という大仕事を乗り越えて、お子さんをこの世に産みだしたときの気持ちを覚えていますか?

それから3年。この3年間にどんなことがあったでしょうか? 授乳は順調でしたか?
離乳食のこと、体重のこと、うんちのこと、何もかも初めてで、迷ったり不安になったりいろいろ調べたりなさったかもしれません。 吐いたり下痢したり、熱を出したり・・・健診に予防接種、すごくがんばってお子さんを育てていらっしゃったはずですね。生まれてすぐ母親の乳房を探して吸いつく動物の赤ちゃんと違って、人間の子は自力ではお乳を飲むことも体温を調節することもできない状態で生まれてきます。親ががんばって世話をしなければ生きられないのです。元気に成長して3歳になったということは、この3年間K子さんがすごくがんばってこの子を育ててきた何よりの証拠です。ママ友との関わりに気をつかい、迷いながらむずかしいしつけにも挑んでいらっしゃった・・・結果がどうであれ、そのときそのとき一番よいと思ったことを一生懸命にやったのです。

がんばってもうまくいかなくて落ち込んでいる友達がいたら、K子さんはどうおっしゃるでしょう?
「大変だったね。あなたはよくがんばってるよ、大丈夫」
友達に言うように、鏡に映したご自分に言ってみてください。

K子さんは、この子をしっかり育てていらっしゃいました。イヤなものはイヤと断固として主張できる力があり、おしっこのことなどそっちのけで遊び込める力があるのは素敵なことです。ご主人には「甘やかし」に見えたかもしれませんが、お子さんはK子さんに自分の気持ちをきちんと受け止めてもらえたからこそ、ゆるぎない自我を築くことができたのです。

さあ、もう一度大きく息を吸って、フゥ~~とゆっくりゆっくり息を吐いて・・・・・・
肩の力が抜けて、リラックスしているからだを感じてください。
スポーツや楽器と同じで、緊張して余計な力が入ってしまうのがうまくいかない元なのです。

お子さんは、ちゃんと自分でできる子に育っています。信じて、任せてみませんか?
おむつはずしは、からだの機能としてはできる時期になっていますから、笑ってトイレに行かないのは「命令されるのはイヤ」という心理的な抵抗のように見えます。「トイレでしなさい」という働きかけをやめれば、あっという間にトイレでするようになる感じがしますが、いかがでしょうか。

偏食も同様、食べさせようとすればするほど意固地になって逆効果のことが多いものです。嫌いなものもテーブルには出し、他の人が食べるのを見る機会をたくさんつくったうえで、食べさせる工夫や働きかけは一切しないほうがよいのです。強制されなければ、いずれ他の人がおいしそうに食べている物を自分も食べたいと思う時がやってきます。お子さんの「今はまだ食べられない気持ち」を大切に受けとめて、待ってあげてください。(偏食の一部には、食べると口の中がイガイガするとか気分が悪くなる、苦みを強く感じるなど、体質的に受け入れがたいものがあることもあります。)

幼稚園で友達と食べるのがきっかけで、苦手だったものを食べられるようになることもありますし、仮に偏食でつらい思いをすることがあったとしても、それも大事な経験です。K子さんが、「そうだったの・・・それはいやだったね」と気持ちを受け止め、防波堤になって守ってあげられれば、お子さんは自力で乗り越えていきます。なんでも「入園までに解決しておかなければ」と思わなくても、大丈夫です。


事例は創作によるものです。

 

永瀬春美先生

千葉大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程卒業
東京学芸大学大学院教育学研究科(学校保健学)修了
東京学芸大学附属小金井中学校養護教諭

その後、大学や専門学校での非常勤講師(保健学・免疫学)と「赤ちゃん110番」などの電話相談員をしながら自分の子育て期を短時間勤務で乗り切る。

東京大学医学部家族看護学教室助教、埼玉県立常盤高校看護専攻科教諭、新宿保育園看護師、成田国際福祉専門学校専任講師を経て現在、篠原学園専門学校こども保育学科専任講師
JACC認定臨床心理カウンセラー


ホームページ 永瀬春美の子育て相談室


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